2006年氷瀑シリーズ6 乗鞍の滝たちへ2006年氷瀑シリーズオマケ
   母成の滝たち  






達沢不動滝 男滝
幅広の優雅な流れを持つ滝である。
新緑や紅葉の頃などは滝前にかかる
木の葉が水の流れと黒い岩盤に映えて
美しい絵になるだろう。
雪のシーズンはちょっと寂しい。



大きさ比較。
滝の右下にダンナがいる。
滝に近づけるぎりぎりの場所にいる。




達沢不動滝 女滝
男滝に比べると細いので
落差があるような気になるが、
落差は同じ10メートル。
両側の岩盤が白く凍っている。




見た目の感じはこんなふうで、
かなり奥にある。
しかし、手前の雪の表情がよく、
冬はかなり魅力的な滝だ。




男滝の滝つぼ付近。
奥に苔が生えていて、緑色をしている。
新緑の頃ならもっと鮮やかだろう。




滝つぼ付近の岩。
氷の帽子を被っている。
厳冬期にはもっと凍っているかもしれない。






銚子ケ滝
半分だけ氷瀑の銚子ケ滝である。
厳冬期にはもっと凍っているだろう。
ただ、この滝の魅力はとっくり型の姿なので
凍っていなくてもそれはそれで綺麗だ。




とっくりの向こう側の分岐部分が
特に綺麗である。




この部分だけを切り取ると、
氷瀑と言ってもよい凍り具合。




滝つぼは深いので、
雪がまるく縁取る形になっている。

2006/3/4 母成の滝たち  (達沢不動滝 男滝10M、女滝10M、銚子ケ滝 48M)

3月に入っていよいよ暖かくなり氷瀑のシーズンは終了したし、さりとてまた花は咲いていないし、残雪は多いし。行き場を失った我々はとりあえず福島にドライブしよう、と特に滝を定めずに自動車を走らせた。
まず、朝起きてみてびっくり。家の周りが春の雪で真っ白になっている。10センチくらいは積もっただろうか。こんな状況で福島に行って、雪に埋もれないか?しかし、行き場がなくてさんざん迷って決定したのが福島方面なのである。仕方がない、雪に埋もれたら埋もれたで戻って来よう。それでいいじゃないか。と、出発。ところが、磐越道は何の規制もなく、福島入りしてみればカラっと晴れていて道路には全く雪はなく、ゆうべも雪は降っていない様子だった。

前日に調べておいて、冬の間は有料道路の「母成グリーンライン」が無料になるのは知っていた。道路がカラカラなら、当然母成グリーンラインも快適に通行できるはずである。磐越道を猪苗代磐梯高原ICで降りて、国道115号線を北上した。
母成グリーンラインに向かうには、中の沢温泉を通る。ここで我々の行き先は決まってしまっている。「達沢不動滝」である。
この滝は今年の滝初めに向かって、積雪のために行き着けないでいた。今なら雪が消えているか、もしくは、しまっていて簡単に上を歩けるかもしれない。(正月のレポートはこちら
思惑は当たった。
除雪こそ正月に来た時と同じ場所までしかしていなかったのだが、その場所から先に足跡がついていた。ほとんど沈み込まずに先に進んでいる。どうやら1台先にとまっていた自動車の持ち主の足跡らしい。
この除雪の最終地点に駐車するような人間は間違いなく達沢不動滝に行く。この足跡に着いて行けば滝に辿り着けるだろう。
そんなわけで、我々も仕度をして雪の上を歩き出した。
そもそも、この集落のいちばん端っこからどれくらい歩けば滝に着くのかさっぱり分かっていない。が、足跡があるってことは、歩ける範囲に滝があるはずだという安易な考えであった。
歩いてすぐに看板があった。
「達沢不動滝 落差10メートル、幅15メートル」とあり、矢印が左の林の方を指している。これでは林を突っ切ると滝があるように思えてしまう。が、足跡はそっちには向いていない。
どうもこの看板は左側の林道を進みなさい、という意味の看板らしかった。だったら滝の規模じゃなくて、滝までの距離を書いていて欲しいものなんだが。
    
  除雪最終地点。右側はややこしい案内看板。看板のすぐ左をまっすぐに進む。
とにかく足跡を追おう。
道は左に沢を見ながら進んでいる。積雪は深い場所で膝くらいなのだが、固くしまっていて沈み込まない。サラサラの雪の部分はもしかしたら昨日降ったのかもしれない。
15分も歩かないうちに神社の鳥居が現れた。どうやらこの先に滝があるらしい。
  鳥居が見えてきた。左の川の上流が滝だ。
今まで自動車も通れるくらいの広さの道だったが、林の中を歩くようになった。ただ、踏み跡がしっかりしているので、雪に足がもぐることはない。途中、先に滝を訪れていた足跡の持ち主とすれ違った。自分以外にこんな季節に滝を見に来るやつがいるとは思いもよらないだろうから、びっくりしたことだろう。
鳥居から3分も歩かずに滝前にあるお堂に出た。
お、滝が見える。
あれ、縦に長い滝だなぁ。あれが達沢不動滝なのかしらん。
と、近づくと「女滝」という看板があった。あ、そうだった。達沢不動滝には男滝と女滝があるのだった。では、男滝は?と、首をお堂の奥にめぐらすと、あったあった。有名な幅広の滝が落ちていた。
  滝のすぐ手前の鳥居。この左手に女滝。奥に男滝。

  
  お堂の中から撮影。左が女滝。右が男滝。こんなに近くにある。
思ったより水が少ない。これは雪のためなんだろうか。
ダンナが男滝の撮影に向かったので、私はまず女滝を見ることにした。
女滝は滝に向かって立つと、男滝の左側にある。遊歩道を歩いてきて、まず目に入るのが女滝である。川を挟んで林の奥にあり、黒い岩盤にさらさらと落ちている様子が優雅である。しかも、両方の岩盤が白く凍っていて、なかなかに風情がある。
川を渡って女滝に近づいた足跡があったが、我々は登山靴にスパッツという装備だったので、ちょっと渡れなかった。
ダンナと交代する感じで男滝に向かった。
うっすらと流れる水が落ちる部分に岩があり、その上が凍っている。簾のような水の向こう側は緑色の苔があった。
この滝は冬に来る滝じゃないなぁ。新緑か紅葉の頃に見ると綺麗なんじゃなかろうか。
厳冬期にはもう少し凍っているのかもしれないが、その姿は想像つかない。
帰りにお堂のそばを通って、その前に積もっている雪が実は屋根の雪がごっそりと落ちたものだと気がついた。落ちた時に下にいたら、完全に圧死している量である。滝を見に来て雪に潰されて死にたくないものである。
  お堂の近くには屋根から落ちた雪の塊。
滝を堪能して、駐車した場所に戻ったら11時になっていた。出発してからちょうど1時間である。滝を撮影した時間を差し引くと、歩いた時間は片道20分くらいだ。もし正月くらいに雪が深くても、スノーシューなどの装備があれば30分もあるけば除雪最終点から滝に辿り着けるということになる。

さて、見れないままの宿題を片付けて気をよくした我々は冬季で無料の「母成グリーンライン」に入った。ここの途中から百選の滝である「銚子ケ滝」に行くルートがあるのである。行けるものなら、百選の滝にも行ってしまおう。
途中、湧き水を汲んでいる人に出会い、水を汲み、さて、「銚子ケ滝」への入り口はどこだろうと探している間に反対側のゲートに着いてしまった。
石筵ふれあい牧場のそばである。
銚子ケ滝へはこの石筵ふれあい牧場から入って、林道を使用して和尚山や安達太良山への登山道に向かう途中から入っていくのが最短ルートなので、いっそそちらから入るか、ということになった。が、ゲートは閉まっていた。
どうも3月いっぱいはアイスクリームの販売以外は牧場は閉鎖中らしい。
ならば仕方がない。戻ってグリーンラインから入る場所を探すしかない。どうも怪しい場所はあったのだ。ただ、駐車スペースだけで何も書かれていなかったので通りすぎてしまったのである。
石筵ふれあい牧場から戻ってみると、その何も書かれていない駐車スペースの対面にしっかり銚子ケ滝入り口と看板があった。あらまあ、この位置では中の沢温泉がわから進んで来たのでは全くわからない。通り過ぎるわけである。
とりあえず、自動車が1台も止まっていない駐車スペースに自動車を入れて、出発することにした。
道は看板の横をいきなり登っている。
登りか。しかも、道は険しそうだ。
ダンナが時計を見て、「飯を先にするという手もある」
と提案してきた。その手、乗った。実はもう1時間も前から空腹だったのである。現在11時半。これから2.4キロ歩いて滝を撮影してまた2.4キロ歩いて戻って来るとしたら、途中で餓死するかもしれない。
そんなわけで、駐車場で昼食にした。
カップラーメンを持ってきたので、コンロでお湯を沸かさなくてはならないのだが、この駐車場、あずまやどころかベンチも全く無い。不親切きわまりない。ちょっとはずれた場所に大きな石がいくつかごろんとおいてある場所があったので、そこに陣取り、お湯を沸かしてラーメンとコンビニおにぎりを食べた。グリーンラインを行き来する自動車が珍しそうに見るが知ったことでない。
空腹を満たして、正午くらいに出発した。
いきなり登り。と、思ったら1分も登らないうちに道路に出てしまった。
あら、これはグリーンライン?と思ったらどうも石筵ふれあい牧場から伸びる林道らしかった。全く除雪されていない状態である。これじゃあ自動車は入れない。
  駐車場から滝への道を見た。赤い矢印の通りに上って行く。

  すると、林道に出る。この先は積雪していた。
看板が示す銚子ケ滝のほうへ歩き出した。
林道歩きなのでほんとうになだらかに登る道である。雪もそれほど深くない。しかも、犬だの人だのの足跡がけっこうある。熊かと思うくらい大きな足跡の犬をつれた人が最近この道を通ったらしかった。
林道を歩くこと15分で銚子ケ滝の入り口に着く。夏場、石筵ふれあい牧場から自動車で入ってきた場合はここで自動車をおりて徒歩になる。
  遊歩道の入り口。夏場はここまで自動車で来れる。

  遊歩道はこんな感じ。林の中を歩いて行く。
赤松やらぶなやらの林の中をゆるゆると登る道で、もし足跡がなければ道がわからなくなるかもしれない。ただ、この日は雪に足がとられることもないくらいで、足跡も消えていないし、なかなか快適に歩けた。
銚子ケ滝入り口から25分して、あと300メートルで滝という場所に出た。
ここで安達太良山の登山道と分かれる。
そこで我々は愕然とした。
大きな犬をつれた先人の足跡は安達太良山へと向かっているのである。
つまり、銚子ケ滝への急な下りには足跡は無い。
いや、正確にはあった。ただ、いったいいつつけたのかわからないくらい、古い足跡だった。
しかも、である。この下り、めちゃくちゃ急だ。雪とも氷ともつかない塊がくっついている階段は、梯子じゃないの?と思うくらいに急角度なのである。
幸い手すりがあったのでそれにつかまっておりて行く。
  滝への最後の難関。急な階段を下りる。

  とにかく急である。
ダンナに引き続いて私。
わたしゃ、もう初めから立っておりることを諦めていた。お尻をついて滑り台状態でおりて行く。撥水加工のオーバーパンツと尻で滑ることを教えてくれたイエローフォールのガイドさんに感謝である。
が、それもかなり怖い思いをした。
なぜなら、角度があまりに急すぎて、止まらないのである。勢いあまって手すりを飛び越えて崖下に落ちそうなのだ。
必死で足と手をブレーキにして進んだ。ちょっと味わえないジェットコースターである。
滑り台にしておりたのだから早いかと思ったが、そうやってブレーキをかけながら進んだので、怖い思いを10分もしてしまった。
いよいよ滝前に出た。
滝前の大きな岩はすっぽりと雪に覆われていた。
そして、滝。
おお、これって、氷じゃないですか。
滝に向かって立って左側に立派な氷の屏風が出来ている。
すっかり気温が緩んだ今でもこれだけ立派なのだから、厳冬期にはもっと高くなって、もしかしたら滝全体が凍っているかもしれない。
ただし、厳冬期には間違ってもこの場には立てないだろう。
あの急角度の階段に積雪があったとしたら身動き取れない。ものすごく長いザイルでも用意しておかないと辿り着けないし、まず、危険だ。
滝前もどこまでが雪でどこに穴があるのかさっぱりわからない。だから、古い足跡だけが頼りだった。いったいどんな人が冬の銚子ケ滝に来たのかしらん、と思う。かなりの滝ばかだ。
酒を注ぐ銚子に形が似ているからこの名まえがついたというが、本当に綺麗な滝である。上の段が砕けて広がり、滝つぼに落ちて行く下の段の向こう側に分岐して落ちる水の流れがある。これがもっと凍っていたらどんな形になるのだろう。ちょっと興味はあるが、危ない興味は持たないことにしよう。
さて、帰らなくては。つまり、登らなくては。
それまでつけていなかったが、軽アイゼンを装着した。
どう考えてもほとんど崖に近い固まった雪をよじ登るにはアイゼンの爪が必要である。
で、その階段の下に立って、笑った。私が尻で滑ったあとがつるつるの平らになっているのである。とっかかりの段が無い。す、すまん、ダンナ。まさか帰りにこんなことになるなんて考えないで滑ってました。
ダンナが苦労して足場を確保して、そのあとを私が登った。
    
  平らになってしまった雪のほとんど崖をよじ登る。マジで崖ですってば。
すごいことに軽アイゼンはしっかりとグリップして、ほとんど滑ることなく雪の崖を登ることができた。こんなことなら、下りる時もつけておいて、ブレーキにして使ったら怖いことなかったのに。思っていたよりも苦労せずに(ただし、簡単だったとは言いませんです)上りきることができた。林道に出るまでアイゼンをはずさずに歩き、30分ほどで林道に出た。
あとはだらだら林道を歩き、2時少し前に駐車スペースに到着。撮影時間を含めて2時間の行程だった。
思いもよらず半分だけではあるが凍った銚子ケ滝を見ることができたし、かなり体力も消耗してしまったし、家を出る前は安達太良山の反対側のほうまで行ってみるつもりだったが、すでに大満足してしまった。
このままグリーンラインを逆戻りして、中の沢温泉で入浴して帰ることにした。(温泉のレポートはここへ

それにしても、福島、すごいです。いろいろな滝があります。
冬に限らず、ちょっと福島にハマりそうな予感がした1日だった。
交通
達沢不動滝
  
最寄ICは、磐越自動車道猪苗代磐梯高原IC。ICをおりて国道115号にでて裏磐梯方面に進む。しばらく進むと裏磐梯との分岐(県道2号や国道459号)になってほとんどの自動車はそちらに行ってしまうが気にせずに国道115号を離れないように進む。
しばらく進むと右側に中の沢温泉の案内版がある。また、母成グリーンラインの案内もある。その道(県道24号)へと右折する。
県道24号に入ると電柱などに「リゾートインぼなり」の案内がたくさん出ている。この案内の矢印にそって進む。温泉街のなかほどで少し分かりづらい場所で右折する形である。右折して突き当たった道で左折。すると左側にリゾートインぼなりの建物がある。その前を通り過ぎて、道なりにずんずん進む。
やがて集落があらわれ、集落を通り越して最後の家に来たあたりに達沢不動滝と林道の案内版が出ている。これを不動滝がわに進む。ちなみに、冬場はこの案内板の下までしか除雪されていない。ここから滝までは雪の上を楽に歩けた場合だと20分くらいである。
案内版どおりに進んですぐに「達沢不動滝落差10m15m」と書かれた看板があり、その矢印の示す左側の林道に入って行く。決してその矢印の先にある林の中には入っていかないように。
そのまま川を左手に見ながら進んで行くと神社の鳥居に出る。その前に駐車スペースがある。
(我々は冬に行ったので、途中から歩きました。ので、神社のすぐそばの駐車スペースのくだりは予想でしかないです。なにせ雪で真っ白でした)
銚子ケ滝
  
最寄ICは、磐越自動車道磐梯熱海IC。インターから県道24号に出て、沼尻高原方面に進む。この終点が「母成グリーンライン」の料金所である。我々が今回銚子ケ滝に向かったルートは、「母成グリーンライン」に入って少し行った場所にある銚子ケ滝入り口の駐車スペースが出発点である。
(本文にも書いたが、グリーンラインの入り口にある石筵ふれあい牧場に入って安達太良山登山口に向かう林道を進んで行けば自動車で銚子ケ滝の遊歩道の入り口に着ける)
この駐車スペースから林道を15分、遊歩道を30分強歩くと銚子ケ滝の前に着く。
最後の300メートルはものすごく急な階段になるし、滝前は岩場なので、簡単な装備では行かないほうがよい。


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